世界遺産 東大寺二月堂 修二会 お水取り
二月堂と言えばお水取りと言われ、東大寺の修二会は、試別火から始まって本行3月1日から14日までの27日間と、約一ヶ月にわたるきびしい修練が続く荒行であるが、本行練行衆の道案内「上堂僧照らし出すお松明」が壇上を駆ける光景に多くの観衆が歓喜する。なかでも12日の夜から、13日未明に若狭井からお香水をくむ「お水取り」の行法も有名で、修二会自体が「お水取り」として全国的に知れわたっている。

お水取りのゆらい
お水取りには、次のような微笑ましい伝説がある。
この行を始められた実忠和尚は、27日間の行法の間、来臨影向をお願いするために、全国の1万3700にも余る神様達の名前を書きしるした「神名帳」をつくられた。
いよいよ行法が始まって音聲朗々と神名帳を読み上げて勧請されると、神様達は遠近を問わずただちにぞくぞく集まって来て、皆この行をたすけ、守護することを引き受けて下さった。
ところが、若狭の国(福井県)の遠敷明神だけは、いつまで待ってもおいでにならない。
神名帳は毎日読み上げられるのだが、その翌日も翌日もおみえにならないので、「どうされたのだろうか」と神様達も心配しておられた。
すると、修二会もあと2日で終るという3月12日の夜、遠敷明神が息せき切って駈けてこられた。
「今ごろになってやって来るなんて、いったいどうされていたんだ。」と神様達があきれたようにたずねられると、遠敷明神は恥かしそうに、「おくれてしまって、すまん、すまん。実は、皆も知っての通り、若狭の小浜はよく魚のとれる所なのだ。
それで、この間から魚釣りに行っていると、あまりよく釣れて面白いので、明日こそ、明日こそと思いながら、とうとうこんなに遅くなってしまって申し訳ない。」とあやまられた。
そして「遅れてきたおわびに、仏様にお供えする香水を奉ることにする。」と言って、遠敷明神は、お堂を出られると石段をおりてゆかれた。
石段を下りたところに、大きな岩が横たわっていた。
遠敷明神は、その前に坐って呪文をとなえてお祈りされた。
すると、前にあった大岩がにわかにぐらぐらとゆれて、まっ二つに割れた。皆が呆気にとられて見ていると、その割れ目から、白と黒の2羽の鵜がとび立った。
そのあとから、清らかな水が、こんこんと湧き出してきた。
「はい、これが、地下を通って若狭から運んで参りました、お供えの水です。」
「おう、これは綺麗な尊いお香水を有難うございます。早速、本尊さまにお供えしましょう。」と実忠和尚は喜んで、その水を汲んで、十一面観音様の御前に捧げられた。
それから、その岩のまわりを切り石で囲み、若狭の国の遠敷明神が出して下さった井戸だというので、「若狭の井戸」と名付けたのが、今も二月堂の下にある「若狭の井戸」だという。
それ以来、毎年3月12日の後夜の悔過が行われている途中で咒師(注)が堂外へ出て、堂童子と練行衆の平衆5名を従えて若狭井にむかう。
ご本尊様が秘仏であると同じく、このお水取りの作法も秘事で、井戸屋形に入れるのは咒師と堂童子だけで、平衆は扉の付近に立って、内が見えないように衣の袖でかくす。
咒師は井戸のかたわらに立って、加持祈祷を行い、堂童子が井戸からお香水をくみ上げるのだそうである。
こうしてくみ上げられたお香水は、内陣の須弥壇の下の3個の水がめに納められて、1年間保存される。
本尊様にお供えしたこのお香水は、病人に飲ませると、いかなる病気にもききめがあるという民間信仰があるので、信者達にわけ与えられたり、行法中の、5日、6日、7日の走りの行のあとで、参詣の人達の掌に二・三滴づつわけて頂いて頂戴したりする。
普通の水であったら、一年も置いておくと腐ってしまうだろうが、お香水は霊水なので、絶対腐らないのだそうだ。
勿論、走りの行のあとで頂くお香水は、前年の3月13日未明にくまれた水である。
それに、不思議なことに、この井戸には、ふだんは1滴のお水もなく、3月の12日の真夜中、お水取りの行われる時には、こんこんと水が湧き出てくると言われている。
また、このお水取りに先立ち、若狭の小浜では、3月2日、お水送りの行法が行われる。
お水取り お水取りや 奈良小浜
※註:咒師とは、修二会で最も重要な役割をもつ四職の人。四職とは、練行衆に戒を授ける和上、修 会の最大目的である祈願をする大導師、密教的な修法をする咒師、内陣の鍵を管理して外部との渉外役をする堂司の四人である。
※この記事は、奈良の昔話「奈良町編」増尾正子著 より転載させて戴きました。
連綿と続く奈良と若狭の集合体
若狭と奈良の関係はそれだけにとどまらず、鮑、烏賊、いりこ、胎貝、海苔等の海産物、特に塩等を調として納める、大和中央政府の大切な食料供給地域であった。
そして、小浜から奈良への道には、十一面観音さまをお祀りする寺が多いとも言われる。
お水取りやお水取り 総別火の準備
2017年2月
15日
奈良・東大寺二月堂の修二会(お水取り)に臨む11人の僧侶「練行衆」のうち、「新入(しんにゅう)」一人が一足早く心身を清める前行「試別火」に入る。
練行衆に初めて選ばれた新入は、他の僧侶より5日早く、同寺戒壇院に設ける「別火坊」に入って心身を清める。声明や所作の稽古に加え、本行で使う法具の準備にも追われる。
20日からの総別火に入る。
他の練行衆(10人)は20日から試別火、26日から総別火に入る。
21日、奈良・東大寺の修二会(お水取り)で、二月堂に籠もって行に励む僧侶「練行衆」10人が参籠中の無事を祈って境内を巡拝する「社参」を行った。
別火坊を一列になって出発。決められた場所でほら貝を吹き、大仏殿や天皇殿などを順に参り、最後に開山堂を参拝した。
その後、一同で二月堂近くの湯屋に入り、参籠の意志を確かめ合う儀式「試みの湯」を行い、二月堂の舞台から聖武天皇陵を遙拝した。
※この項出典参考:読売新聞(2月22日追記)
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当サイトは、日頃の散歩コースを決めるときに、せっかく行くなら伝統的な行事をやっているところが良いねと思って整備した「忘備録」です。
したがって、掲載内容の「行事&日時は過去のもの」です。こんな「行事」があるんだねとの参考にして下さい。
奈良は、世界遺産の地、1300年の歴史があると言われるだけあって、寺社仏閣が多く点在し、最近の観光誘致で多彩な行事が開催されています。
同じ日に伝統を継承する諸行事が行われたことを後日知り、あ~~「あそこにも行ってれば」良かったと思うこともあります。
そんな思いもあり観光パンフレットなどを元に作成したものです。したがって「誤記」もあると思います。
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